透明性と秘匿性の両立を実現する、秘匿化トレーサビリティ

1.サプライチェーンが持つ課題とは


近年、さまざまな製品の製造や流通に複数のステークホルダーが関わる事が一般的です。特に自動車産業などでは巨大な国際サプライチェーンが形成されています。

このようなサプライチェーン上の企業にとって、製品のトレーサビリティ情報やサステナビリティ情報がこれから非常に重要なリスク事項になることが予想されます。

例えば、EU(欧州連合)の経済圏では、デジタル製品パスポート(DPP)による規制の準備が既に始まっています。

サプライチェーン上の企業が今まで通り、DPP制度が導入された市場で自社の製品を取引したい場合は、その製品を構成する1つ1つの部材についてまで環境基準をクリアしていることを証明する必要があり、表示に不備や不正が発見された場合に流通を止められるリスクがあります。

自社で製造した製品に対してエビデンス(根拠データ)となる完全なサステナビリティ情報を付帯する為には、まず自社の製造プロセスで排出したCO2等の環境負荷の測定と記録が必要になります。

また、その製品を構成する部材のエビデンスとなる完全なトレーサビリティ情報を付帯する為には、その部材の供給元の企業にエビデンスを提出するよう要求し検査する必要があります。

EUでは、製品を構成する部材の選定や調達についてもサプライチェーン上の企業の責務として、合成金属等の精製プロセスまで含めたエビデンスの提出を求めています。

例えば車載蓄電池は希少金属のリチウム・コバルト・ニッケル・マンガンが使われており、近い将来にEUでは、それらのリサイクル率が低い製品の流通量が大幅に制限される見通しです。

このように特に海外との取引に関して、サプライチェーン上の中間素材に至るまでの情報を製品に表示する為には、企業の機密情報に配慮しながら不正ができない方法で開示する仕組みの整備が緊急の課題です。

 

2.理想のトレーサビリティを実現するために

上記を解決するために、不正のないトレーサビリティ情報を時間や場所の制約なく、低コストで信頼する他のステークホルダーに開示できることが望まれます。

当社はこれまで、ブロックチェーン技術を応用した優れた改ざん耐性を持つトレーサビリティ・システムの開発に取り組み、複数の特許技術を取得しました。

このトレーサビリティ・システムを用いて地方公共団体も参加する社会実験を行い、食品流通のトレーサビリティ情報やCO2排出量・削減量を可視化・価値化したサステナビリティ情報を利用者に提供してきました。

2023年2月に取得した特許技術を用い、自社ソリューションTapyrus(タピルス)に秘匿化された原料の成分を記録する機能を追加することで、DPP制度に適合する次世代ソリューションへの進化を果たします。

3.特許技術で実現する、透明性と秘匿性を両立した秘匿化トレーサビリティ・システム

本ソリューションは、サプライチェーン上のステークホルダーにとって非常に重要な、原料の成分に関する知的財産を保護することと、公開情報に基づく検証可能性(透明性)によって不正な表示を防止することの相反する課題を、ブロックチェーンとゼロ知識証明の技術を用いて解決します。

当社の次世代情報プラットフォームでは、製品の成分情報からトランザクションを作成する際に、秘密計算が可能な情報の秘匿化が行われます。

ブロックを構成する過程で具体的な分量や成分比率に対する知識や意識がなくても、秘匿化されたトランザクション情報に不正がないことを検証することが可能です。

当社は今後、複数種類の合成金属・合成繊維の成分を記録する実証実験を行っていきます。

DPP制度が始まる2027年までに、海外企業を含むサプライチェーン上の多くの事業者様がサステナビリティ情報を含む、完全なトレーサビリティ情報を自社の製品に表示できるように、トレーサビリティ・システムの運用を支援し、サーキュラーエコノミー社会に貢献していきたいと考えています。

 

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